あれこれと

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盛忍さんの「漱石への測鉛」を読みました

盛忍って誰?と思われるかもしれません。盛さんとは高校時代の国語の先生です。なぜ、高校時代の先生の本を今読んでいるかというと、盛先生が昨年お亡くなりになっていたことを知ったことがきっかけでした。

盛先生は、とても記憶に残る先生でした。前にもブログに書いたような気がしますが、盛先生の授業では、森鴎外舞姫を題材としていましたが、いつも話がそれてしまい授業が遅々として進まないのです。やがて我々生徒にとって授業よりも先生の話のほうが面白いので、先生にいかに授業をさせずに話をそらすように誘導するかということに心血を注ぐことになります。先生は、「今日は授業やるからね」と言ってから授業を始め、そして「今日もちっとも進まなかったなぁ」という言葉で授業を締めくくるのが常でした。そして1年かけて舞姫を終わらすことが出来なかったのでした。

先生が授業を忘れて何について熱心に語っていたかというと、その当時、本を書いていて、それがいかにたいへんな作業かということが多かったように思います。「先生、本は書けた?」と質問すると、そこから延々と本を書くことの難しさを語りだし、易々と授業を中断させることに成功するのでした。時には1週間かけて1行も書けないということもおっしゃっていたように思います。そしてその当時書いていた本というのが、この本であったようです。

この本は、夏目漱石の「それから」「門」「行人」についての評論と言うか解釈論と言うのかな?そういう類の本です。この本を読むにあたり、「それから」と「門」を読みました。「行人」はまだ読んでいませんが、先に読んだ2作品の内容を忘れないうちに、盛先生の本を読むことにしました。

こういうジャンルの本をはじめて読みましたが、なかなか理系っぽい作業なんだなぁと思いました。

「それから」では、「自然の命ずるに従って」という一文の中の「自然」が何を表すかということが、それまでの文章から考えて最も理にかなっているのは、こういう解釈であろうということを一つ一つ説明されています。それは、ある現象に対して考えられ得るだけの背後要因について一つ一つ検証し、正解に辿り付く理系の作業に似ていると思いました。

「それから」も「門」も、それまでの先人達、たとえば武者小路実篤谷崎潤一郎ら文豪の解釈に対して、それらが十分ではないという云わば挑戦状のような内容になっています。これらは先生が二十代の頃に書いたようで、その若さゆえの気負いのようなものと情熱が感じられます。

どの作家の本か忘れてしまいましたが、自分の作品が受験の問題になっていて、その問題を解いたところ不正解だったということを読んだことがあります(そんなことをエッセイに書きそうなのは遠藤周作さんかなぁ)。ということで、結局は、どれだけもっともらしい解釈を導いたとしても、その考えが作家の意図したものかどうかというのは作家しか答えようがないのですが、その小説を他人がどのように解釈したかということは、とても興味のあることですよね。そういう点で、こういうジャンルの本も面白いなぁと思いました。特に、「自然」というたった2文字に、盛先生が数十ページも費やして説明するだけの意味が含まれているとしたら、夏目漱石はすごい人だなぁと感じますし、「行人」に至っては、その小説以上のページ数を割いて解釈論を展開している盛先生もすごいなぁと思います。

先生と最後に会ったのは、大学生になって帰省した際に高校時代の友人達と高校で待ち合わせた時だったと思います。その時、高校の近くで偶然、先生に会い、先生から「ちょっと太ったねぇ」と言われ、「僕のこと覚えてるんですか?」と訊いたら、「覚えてるよ」と言われました。私はクラスで目立つ存在ではなかったですし、理系に進むことに決めていたので、授業も熱心に聞いていなかったので、ちょっと意外でした。その時、大学で無頼派の文学という講義を受けていて、太宰治の作品も題材にしているという話をしました。その作品名が思い出せず、覚えている範囲で内容を説明しましたが、「そんな小説あったかなぁ」とわかって貰えなかったことで、余計にその時の会話が記憶に残っています(因みに、その小説は「トカトントン」です。とても短い小説ですが、先生は長編を想像していたのかもしれません)。

「先生の本読みましたよ。あそこは納得できるけど、あの場面はちょっと想像が過ぎるんじゃないですか」というような話がしたかったなぁ。先生のご冥福をお祈りします。

 

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盛忍