主人公は、父の死がきっかけで、その父が嫌っていた祖父が、かつてパリで放蕩生活を送っていたことを知り、思い切って仕事を辞め、パリで祖父の足跡を探す生活を始めます。そこで偶然知り合った人達との交流から祖父に関する情報を辿ろうとし、その過程で起こる出来事が描かれています。
この小説は、いくつかの短編小説からなり、主人公がパリで出会った人達、それは夢を抱いてパリに来たけど、それが叶わなかった人達や、パリに大切なものを追い求めて来た人達のドラマが描かれています。そして、それら短編に共通するテーマとなっているのは、祖父の足跡であり、それが少しずつ明らかになっていくという点で推理小説的な要素があり、一度で二度美味しいというような構成になっています。
登場人物は初対面では皆、胡散臭い印象がありますが、それぞれ憎めないところがあり、読んでいくうちに応援したくなってきますが、必ずしもハッピーエンドではないところが、それぞれの話をより印象深いものにしているように思います。
藤田さんの本を読んだのは、これが3冊目ですが、どの小説も過度にドラマチックな結果にしようとしていないけれど、きちんと読者にインパクトを与えているというのは、すごいなぁと思います。少しずつ藤田さんの小説にハマってきました。
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