こういう本を読むと、小説って芸術なんだなぁと感じます。
童話というか寓話というのでしょうか、そういうちょっと不思議な話です。出だしから、主人公について、3人称で淡々と語られていきます。短い文章で、全て過去形で語られることによって、その先に待ち構えている彼の人生が、なんらかの終わりを迎えているのだろうと予感させられ、期待と不安が入り混じった状態で、読み進めていくことになります。
内容は、ある男の子が、偶然チェス好きの男性と出会い、それがきっかけで、チェスにのめり込んでいきます。心優しく、繊細な心を持った少年が、傍から見れば幸せそうには見えないけれど、彼自身には自分にふさわしいと思う居場所を見つけて、そこで、勝敗ではなく美しさにこだわった彼らしいチェスを続けていきます。
話の終わらせ方も見事だなぁと思いました。最後の数ページは、やはり3人称ですが、現在形で語られることで、彼についての不思議な物語はこれでおしまいですよ と言われているように感じます。それが、また寓話という印象を与える効果をもつのでしょうね。
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