この本は檀さんが亡くなって随分経ってから出版されたもので、過去に発表された旅行に関わるエッセイをまとめたものです。
旅行先は国内であったり、海外であったり様々ですが、どこであっても檀さん流に楽しむ様子が描かれています。檀さんにとって、旅の醍醐味は予定を立てないことだそうで、たまたま訪れた場所で、たまたまそこで出会った人や入った飲み屋などでの一時を満喫し、そして、はいサヨウナラというのが旅の楽しさだということを書かれています。
私の旅行はというと、檀さんとは全くの反対で、貧乏性なもので、「ここに来るのは今回が最後かも!」とか思って、もうとにかく出来るだけ多くの場所に寄って、美味しいものをいっぱい食べるために細かい予定を立て、当日は、その計画を遂行するために、ひたすら動き続けます。そして旅の終わりに疲れ果てて体調を崩すというのがいつものパターンです(笑) 檀さんのような旅の達人とは程遠いですね。
檀さんと言えば「最後の無頼派」などとも言われることがありますね(このエッセイでも、自らそのことに触れられています)。無頼派の定義は曖昧で、そこに分類される作家にも様々な意見があるようですが、必ず無頼派と言われるのは太宰治と坂口安吾の両者です。太宰は、檀さんの学生時代からの友人で、二人の宿屋での体験が走れメロスの題材になっているとも言われています。坂口安吾は、精神的に追い詰められていた時に、檀さんの家に居候していたことがあるそうで、その頃のことは、檀さんの娘で女優の檀ふみさんのエッセイにも、こわいおじさんといったことが書いてあったと思います。また、二人でカレー100人分を注文したという逸話もあり、私も二人が食べたカレーを食べたいと思い、その注文した店の一つである「ほかり食堂」にカレーを食べに行ったことがあります(笑)
二人に病的なイメージがあるのに対し、檀さんは自身でも体が強いことを自負していたことをいろいろなところで書いていたので、どうも同じ無頼派という感じがしませんが・・・。檀さんがよく使う言葉である「天然の旅情」に身をまかせ、自由気ままに旅をする姿は、このエッセイからも十分にうかがい知ることが出来、その自由な精神は、やはり無頼派ということになるのかなぁとも思います。
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石神井にある「ほかり食堂」のカツカレー