タイトルの花筐、白雲悠々のほか4作品が収められています。私が初めて読んだ檀一雄さんの作品が白雲悠々で、この小説の中で描かれる檀さんの息子である太郎さんの姿と夏の日のキビ畑の情景が、とても清々しく、そこに惹かれて他の作品も読むようになりました。今でも、檀さんの作品の中で白雲悠々は大好きな作品です。
この本は以前読んだことがあり、今回、久しぶりに読んだのですが、どの作品も少し読むと、「あぁ、この後、こういう展開になったんだよなぁ」ということを思い出しました。たいていの本は、二回読んでも、はじめて読むがごとく楽しめてしまうという忘れっぽい私が、こんなに思い出せるというのは奇跡的で、それだけ印象深い内容だったということが言えると思います。
特に、「終わりの火」という、肺結核によって最期を迎えようとしている妻の姿を描いた作品は、まるで、その映像を映画か何かで観たことがあるような気がするほどに鮮明に記憶に刻まれています。因みに、この作品は、檀さんの先妻のリツ子さんのことを描いたもので、その後、発表された「リツ子・その愛」「リツ子・その死」という作品の元になったもののようです。
ということで、たまに、過去の作品を読んでみると、「昔の作家の実力はすごいなぁ」と感じられて良いかもしれませんよ。
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