大学1年生の女性(直子)が主人公の話です。彼女の姉(幸恵)は生まれてからずっと重い病気を患い、そのことで両親は常に姉にかかりっきりで、直子は常に両親から放っておかれているように感じながら育ちます。直子は彼女なりに精一杯のことはしますが、姉の存在が時には疎ましく、そう思う態度が外に出てしまうこともあり、のちのち、彼女が本当に姉に対して親身に接していたのか、それとも、そこに打算があったのかということでひどく悩む結果になります。
矢口さんは、自身が病気のため小学5年生までしか学校に通えなかったそうですので、おそらくこの小説に登場する家族に、自身の体験を投影している部分もあるのでしょうね。この小説の直子や幸恵の態度には、そういう境遇ゆえの複雑な気持ちが表れているのですが、その部分に対する説明はないので、そこは読者が読み取らないといけないところになります。それをどこまで理解できるかに読解力の差が出るのかなぁと感じました。というのも、文庫本の最後に小林光恵さんが解説を書いているのですが、その解説を読んではじめて「なるほど。そういうことだったのか!」と思うところが多々あり、実はこの小説の表面的な部分しか理解していなかったんだなぁということに気が付いたので。
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