冒頭の1ページに、「Fair is foul, and foul is fair」というシェイクスピアのマクベスからの引用と、その和訳(「きれいは汚い、汚いはきれい」、「いいは悪いで悪いはいい」など)が、いくつか並んでいます。もう、この時点で、「変わった小説だなぁ」という予感がします。
主人公は、野球の天才で、彼が産まれるところから始まり、各章は、彼の年齢となっていて(はじめが「0歳」、次が「三歳」、その次が「十歳」といった具合に)、その年齢での出来事が描かれています。三歳から、野球の才能を見せ始めるのですが、その「三歳」の章から、語り手が変わります。早くも、このあたりから「おや?なんだか普通の小説とは違うぞ」という予感がします。
常に、「何か悪い予感がする」ということが示唆されているので、始めから終わりまで、読んでいて、すっきりしない感覚があったのと(そこが狙いだと思いますが)、残念ながらマクベスを読んだり、観たことがないので、おそらく、この小説の面白味を余すことなく堪能することができていないのだろうなぁという自分自身に対する残念感が残りました(笑)
伊坂さん自身もあとがきに書いていますが、「予想どおり、何だこりゃ?と思った読者が多かった」そうで、レビューを見ると、たしかに、評価はあまり芳しくないですね。私も、「何だこりゃ?」と思ったほうですが、そこは、もちろん読者の好みもありますし、読解力にも左右されそうだなぁと思いました。
解説を読むと、この小説は、まず「本とも」に連載され、その後、単行本化され、最後に文庫本化されており、単行本化、文庫本化にあたり、かなり加筆されているそうです。ということで、伊坂さんファンは、それぞれを読み比べると面白いかもしれませんね。
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