あれこれと

北海道に関するホームページを作ったけど、いまいち訪問者が増えないので、ブログを立ち上げて、こちらを経由してホームページを訪問してくれる人が増えるといいなぁと。なので、こちらではテーマもなく、北海道とも無関係なことも書いていきます。こちらのブログを見た方は、リンク先のホームページ「いつでも北海道に行きたい!」も見てみて下さいね!

「檀一雄」展に行って来ました

檀一雄さんと聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、女優の檀ふみさんのお父さんと聞けばなんとなく聞いたことがあるなぁという人もいるかもしれません。

私が初めて檀一雄さんの本に出会ったのは大学生の時でした。日本文学の授業で無頼派がテーマとなっていて、太宰治坂口安吾らと一緒に檀さんの白雲悠々という短い小説を題材として授業が行われました。その小説は、檀一雄が知り合いのお見舞いに行く途中に、道草して小学校に行きそびれた息子にバッタリ出会うという日常的で特にどうということもない話で、父親のダメダメぶりが描かれた内容なのですが、文章には題名のようにどこか清々しい印象があり、優しさが感じられました。講義の中では、檀一雄という人が太宰治の学生時代からの友人であり、走れメロスは2人が熱海かどこかでドンチャン騒ぎの豪遊をし、お金がなくなってしまったので檀を宿に残して太宰がお金を工面しに行った体験を題材にしたことが紹介され(走れメロスと異なり、太宰は戻って来なかったそうですが)檀一雄という人間にも興味を持つようになりました。

檀さんの代表作は「火宅の人」で、この小説は愛人との出会いから別れまでを中心に綴ったほぼ私小説と言われています。火宅の人はのちに映画化されたり、奥さんの視点でその時期をどう見ていたのかを奥さんへの取材に基づき小説化した沢木耕太郎さんの「檀」に取り上げられています(その後、愛人だった人がその人の視点で檀一雄さんについて語った小説も出版されています)。火宅の人も檀一雄という人の一面を知る上で、よい小説ですが、私が特に好きなのは、初めて読んだ「白雲悠々」と「娘たちへの手紙」です。娘たちへの手紙は、自分の子供たちにどう生きて行って貰いたいかという道を示した遺書でもあります。そこには、多難であればあるほど実りの多い人生になるので、これからの人生が多難でありますようにということが書かれています。それは厳しい言葉ですが、濃密な人生を送ってきた檀さんの経験から発せられる虚飾の無い言葉で、厳しい中に優しさが感じられます。私は「なかなか辛いなぁ」と思った時、いつもこの短い小説を読んで勇気を貰っていました。

檀一雄さんが亡くなってから、ずいぶん経ちますが、上述のように映画や小説に取り上げられたり、いまだにテレビで取り上げられることがあるのは、檀さんという人の生き方に憧れ、その人柄に惚れる人が存在し続けるからでしょう。私もその中の一人で、檀さんの本を読むだけではなく、晩年を過ごした福岡の能古島の家を見に行ったり、柳川のお墓参りに行ったりもしました。

前置きがずいぶん長くなりましたが、そんな檀一雄さんの生誕100年を記念した「檀一雄展」が、檀さんが長く住んでいた石神井で開催されていることを、先週たまたま行った開高健記念館に置いてあったパンフレットで知り、慌てて本日見に行って来ました(そんな、たまたま知るようではファン失格ですね・・・)。

檀さん直筆の原稿や絵などが多数展示され、とても興味深く見させていただきました。残念ながら撮影禁止だったので写真がありませんが・・・。もし興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非、散歩がてら石神井公園まで足を運んでみて下さい。石神井公園ふるさと文化館で1224日まで開催されているそうです。


檀一雄展